夜の世界
普段、ヨットに乗るのは昼であり、夜に乗ることはあまりありません。しかし夜に乗ってみると、昼とはちがったいろいろなものを見ることができます。夜、海上を走るという点では夜行フェリーも同じですが、ヨットだとスピードもゆっくりで、360度自由に見渡すことができます。
夜、海の上のヨットから見えるものを挙げていくと...
街の明かり、信号機、クルマのライト ...人口の多いところと少ないところが一目瞭然です。道路の渋滞もよくわかります。郊外ではクルマがまばらで移動する速度も速く、信号は赤黄の点滅になっていたりします。山が海に迫っていて海沿いに道がないところは暗闇です。
造船所、コンビナートの明かり ...瀬戸内海を走っていると、ところどころにあります。夜中でも照明は強烈で、産業の息吹を感じる反面、クルージング中に見る風景としてはイマイチなものがあります。
橋のライトアップ ...海上から見るのがベスト。明石海峡大橋では1時間毎にレインボーの電飾をやっています。橋の照明で海面も明るく、安全の面でもよいのでしょうが、一方では明るすぎて夜の海の神秘性が失われているようにも思います。瀬戸内海では、瀬戸大橋やしまなみ海道ができてからは、夜でも照明が明々と点いて遠くからでもよく見えるので、ナビゲーションの楽しみが減ってしまいました。
本船※ ...フェリーは客室や廊下の照明が明々と点いていますが、貨物船は航海灯以外はほぼ真っ暗で、まだ距離があると思っていた本船が意外に近くを通ったりして、結構神経を使うことがあります。それでも夜、本船が航路に沿って連なって進んでいるのを見ると、まるで道のようであり、海上にも物流の大動脈があることを実感します。
漁船 ...漁労中だと、曳いている網も避けないといけないので要注意です。イカ釣り船の集団を見ることもありますし、明け方近く、漁場へ急ぐ加太の鯛釣りの高速漁船に出会うこともあります。
灯台、航路ブイ ...夜の海に出てみないと値打ちがわからないものの典型。ハイテクのGPSよりローテクの灯台のほうが圧倒的に信頼感があります。
夜光虫 ...プランクトンの一種で、船が波を切ったりして刺激を与えると光ります。風のない夜に真っ平らな海面を機走していると、スクリューで攪き回された夜光虫が光を放ち、エメラルド色の航跡ができます。プランクトンの多い、汚れた大阪湾ならではの幻想的なシーンで、大阪湾を抜けて海がきれいになると見られなくなります。
星空 ...紀伊水道を出て串本あたりまで行くと、晴れていれば満天の星を見ることができます。天の川の中の小さい星も見え、星に包まれているような気分になります。流れ星も、こんなに頻繁に見えるものだったのか、と思うくらい見えます。
ざっとこんなところでしょうか。
昼なら多くのものが目に入るのに対し、夜は光るものしか見えません。その情報量の少なさが、昼では気付かなかったものを際だたせてくれます。ご参考までに、夜間航海でお世話になる灯台と航海灯について、その例を載せておきます。
※ 貨物船など大型の動力船を「本船」と呼ぶようです。
2008年7月30日 西野・記
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